時蕎麦

大人にならないと分からないものというものがある。それは酒の味だったり、タバコを吸うとどうなるのかなどの子供には許されていないものから、大人も子供も平等にできることだけれど、大人にしか価値のわからないものまで様々である。

子供の頃、家族で食事に出かけたりした際、父親がおしぼりで顔を拭くのがとても嫌いだった。オヤジくさいし、顔を拭いた後のお絞りはなんか汚く感じるし、「アアァ…。オオゥ…。」みたいな変な声を出しててキモかった。父親に、「それやめてよ!」と何度言っても、お前もそのうちやるんだ、俺と同じ歳になっても嫌だったら言ってくれ。と相手にしてくれなかったことを覚えている。さて、お父さん。あの頃お父さんは50歳とちょっとくらいだったと思います。僕は今27歳、今年28になります。お父さんの様に立派じゃないかもしれないけれど、なんとか1人でやっています。何をやってもなんとなくダサくて、18も年下の母の尻に完全に敷かれ、よく襖越しに小休止の体制で中にいる母に「今、話しかけてもいいかな?」とおっかなびっくり話しかけてた父(子供たちは謁見と呼んでいました)。電化製品を触っては壊し、何度も買い替え、最終的に掃除機すら触ることを禁止された父。昔はちょっとバカにしてたけど今になってその偉大さが分かります。僕より10センチ以上も背丈が低く、いつも家族で1人だけ理系だった僕を見て本当に自分の子供が疑っていたその小さな背中は、今とても大きく感じます。僕も、お父さんの様になれるかなあ。

そんな父に今言います。大切なことだけど1回しか言いません。

 

 

おしぼりで顔拭くの、超気持ちいい。

 

疑ってごめん。超気持ちいい。いつからだろうか、こんなに全力でおしぼりで顔を拭く様になったのは。もうね、めっちゃ拭く、即拭く。なんならおしぼり来る前からどんなおしぼりが来るか考えてる。あったかいのか、冷たいのか、袋に入っているのか、いい匂いがするタイプなのか。もう、おしぼりで顔を拭くことを動詞化したほうがいいと思う。

 

「おしぼる」動詞

意味 おしぼりで顔を拭くこと。また、それと同じ類の快楽を得ること。

しかし調べたことろ、出先の店で顔を拭くのはマナー違反であると感じる人が多いそうだ。私も少し控えなければいけないだろうか。