試験監督の妙

仕事の中で、試験監督が群を抜いて嫌いだ。昨今教育業界の残業の多さは話題に上がって久しいが、試験監督には残業がない。必ずその時間には終わる。特に急ぎの仕事がなければ丸つけだって採点日に回したっていい。しかし私は試験監督が嫌いである。

遡ると、学生の頃に試験監督のバイトをしていた頃は嫌いじゃなかった。時給が発生していたからだと思う。その時間だけのアルバイトであれば、私は何もしない暇なバイトが好きだった。コンビニの夜勤や、待機のバイト、交通調査員など、よくやったものだ。しかし、専任教員の試験監督は違う。いくらやろうと月の給料は増えない。その時間に他のことをすることも許されない。なんなら、厳密には椅子に座ることも許されてはいない。これがこんなに苦痛なことだとは学生時代には思わなかった。こっそり本を読むこともあるが、そうはいかない日もある。そんなときは以下の妄想で時間を潰すことにしている。

 

1.直近の自分の将棋を正確に脳内で並べる。

 

記憶力は、脳を使い続けなければ衰えるそうなので、こうした機会に記憶力のテストをする。これは何にも掘り下げても面白くないのだが、私は基本毎日オンラインで将棋を指すので、直近の将棋の手を全て思い出す、それが出来たらその前の対局の手を全て思い出す、と言うのを繰り返すのだ。特にボケ防止になっているとは思えないが嵌ると楽しい。熱中し過ぎて試験時間をうっかり超えてしまうことが多々あるのが玉に瑕。「先生、そろそろ回収の時間では?」と生徒に言われて現実に引き戻される。

 

2.6億円当たった時のことを事細かにシュミレーションする。

 

私は毎週totoBIGを購入しているのでいつか6億円が当たる。そうした場合の具体的な金銭のシミュレーションをする。まずは奨学金を返し、都内のいいマンションに引っ越し、とざっくりしたところから初め、間取りや欲しい家具を考え(防音室にグランドピアノを置きたい)、買う車を決める(考えた末大体いつもAudi…)。最終的には資金の運用くらいまで考えるのだが、この辺りでいつも生徒に「先生、試験時間過ぎてませんか?」と言われて我に帰るのが常。

 

3.可愛い女生徒にもし告白された時のことをシミュレーションする。

 

据え膳食わぬは男の恥というが、食うか食わないかは別として、いつ据え膳にエンカウントしても良いように備えることは男のエチケットである。従って、可能性は限りなく、例え塵よりも少なかったとしても、むしろそれくらいだったら6億当たる可能性のほうが高かったとしても、美人の生徒から告白された時のイメージトレーニングは怠るべきではないのだ。学園祭の放課後や卒業式など、シチュエーションは様々だが、どのパターンにおいても完璧に対応するのが大人だというものである。どんな妄想をしているかは流石に恥ずかしいため描かないが、いつも妄想がエスカレートしここに書くもの憚られるような事態になる。しかしたいてい「先生、終わりの時間です。」と生徒に言われて自分はしがないアラサー男性教員だったと思い出し、現実に打ちひしがれながら答案を回収して終わる。